【HQ】光の射す世界【Egoist✕光など無い世界】
第2章 平行世界の彼等
「園子ちゃん、ちょっと。」
笑顔で手招きをして俺を呼ぶ徹。表情こそは笑みを浮かべているが、何だか凄みのある笑顔というか、その笑顔が逆に怖かった。及川さんと徹は別人と頭では理解しているが、なんせ顔も声も性格も同じなのだから、心がついて行かない。
徹の傍に寄ると、徹は俺の肩に手を回し、こそこそと話し始めた。
「ねえ、銃はダメだって言ったよね?」
「…すみません。条件反射で。」
普段の状況からして、自分に向かって飛んでくるものといえば、銃弾。飛んでくる物がバレーボールと大きく、撃ち落とせると判断し、咄嗟に対処しようとした結果だ。俺の世界であればその小さな判断ミスや反応の遅れが命取りになる。
「まあ、早過ぎて皆、っていうか俺もよく何が起きたか分からなかったけどさ、こんなのが何回も続けば流石にフォロー出来ないからね。」
「はい。」
「そして敬語禁止って言ったよね?」
「…はい。」
「次流れ玉が飛んできたら、避けるか、ボールを取るかの二択だからね。」
流れ玉というから、てっきり銃弾だと思っていたのに、こっちの世界では流れ弾ではなく、流れ玉。銃は使用禁止。自分の今までの生き方を完全に否定されているような気がして、あまり気分のいいものではなかった。
別に人を殺すのが好きだとか、血を見るのが好きだとかそういう訳ではないけど、俺達はそうやって生きてきたから、平穏など分からない。