【HQ】光の射す世界【Egoist✕光など無い世界】
第2章 平行世界の彼等
俺の世界の話を二人は真剣に聞いてくれた。俺も時間を忘れ話を続けた。話が一段落ついた頃にはもう十二時をまわろうとしていた。そして、急激な睡魔が襲ってきた。これくらいの時間なら起きている事の方が殆どだし、眠くなる事なんか滅多にないのに、どうしてもその睡魔に逆らう事が出来なかった。そして、その睡魔に意識を委ねた。
「…っ!……!」
モヤがかかったような意識の中、誰かに名前を呼ばれた気がした。
「…園子!」
目を覚ますと心配そうに俺の顔を覗く徹の姿。まだ頭がぼんやりする。
「ごめん徹、話の途中だったのに寝てしまった。」
キョトンとした顔の徹。俺、何か変な事言ったか?
「岩ちゃん!岩ちゃん!園子が俺の事〝徹〟って呼んでくれたー!」
そう言って部屋を飛び出して行った徹。────違う、あれは徹じゃない。及川さんだ。
部屋を見回すと、そこは徹の部屋ではなく俺の部屋で、俺が寝ていたのは自分のベッド。…戻ってきたんだ。
「ねえ、園子もっかい言って!」
勢いよく部屋を出て行った及川さんが、再び戻って来た。
「すみません及川さん寝ぼけてました。」
「そういうのはいいから、もっかい〝徹〟って言ってよ園子。」
「…無理です。」
「さっきは呼んでくれたじゃん!」
「クソ川!朝からうるせーぞ!」
岩泉さんの罵声が響いた。それを気にせず、騒ぐ及川さん。戻って来れた事に対する安心感はあったが、徹がいない事に対しての寂しさ…というのだろうか、それもあった。
「及川さん、ありがとうございます。」
「え?何が?」
「いえ、なんでもないです。」
俺はまた光の無い世界に戻った。でも、これが俺の生きる世界。懐にある銃。血の匂い。人の死。徹の姿、あの優しい声。俺にはあの世界は温か過ぎる。
────徹、どうか、お元気で。またもし巡り合う事があれば、今度は俺から言うよ。
一緒にバレーをしよう。
…ℯꫛᎴ