【HQ】光の射す世界【Egoist✕光など無い世界】
第2章 平行世界の彼等
朝目が覚めると、目の前には及川さん。昨日は確かに自室で寝た筈なのに。そして、目の前にいる及川さんは俺の知る及川さんではなかった。そして、岩泉さんの姿をした岩泉さんも俺の知ってる岩泉さんではなかった。
話し合いの末、たどり着いた結論はパラレルワールドへのトリップ。何が原因でこうなったかは不明。そもそもパラレルワールドなんて実在するのか。空想の世界の話でしかないと思っていたのに、目の前にいる及川さんと岩泉さんは見た目や、声、性格までも同じなのに全くの別人。そんな二人を目の前にして、そのパラレルワールドへトリップしてしまったという仮説を信じる他ない。そして、外に出て、その仮説が俺の中でほぼ確信へと変わった。外の世界は見たことのない景色。血の臭いや火薬の臭いなんてしない、平和で和な町並み。衝撃的だった。
「ねえ、園子ちゃん。目、怪我でもしてるの?」
「いや、そういう訳では。」
姿、声、及川さんと同じなのに、俺の事を園子ではなく、園子ちゃんと呼ぶ及川さんに違和感を感じた。俺の知る及川さんとは別人であるのだから、仕方のない事だけど。
「折角の可愛い顔が隠れちゃって勿体ないよ。」
なんか妙に軽い所は同じ。
「にしても、どうしよっかなー。もうすぐ学校着いちゃうよ。」
「親戚ってことにでもすればいいだろ。事情話す訳にもいかねーし。」
こっちの岩泉さんは、俺の知ってる岩泉さんとさほど変わりがないようで、妙な安心感を覚えた。
「園子ちゃん、ここは日本であって銃なんか持ってたらいけない訳。だから間違っても今朝みたいにむやみやたらと人に銃を向けるのは無しね。日本は平和な国だから、抗争とかそういうのはないから。」
「身に付いた習慣はそう簡単に捨てられるものじゃありません。」
「あと、敬語禁止ね。夏休みに遠方から遊びに来た遠い親戚っていう設定で通すから、敬語はダメだからね。及川さんって呼び方も良くない。徹って呼んで。」
そうは言われも顔も声も性格も及川さんそのものなのに、名前で呼べだとか敬語はダメだとか、そんなの無理。
「郷に入っては郷に従え、だよ。」