第3章 ちょっとだけ
声がする方を見ると、知らない男子がアタックを打った体勢になっていて、ボールはこっちに向かっていた
……とん……
この音とともに私の両腕に重い何かがぶつかったような感覚のあと、ジンジンと痛みがきた
ボールは、徹のオーバーの時の手にすっぽり入ったように見えた
周りからは、ちょっとした歓声が上がっているようだったけど、ちゃんとした声は届かなかった
………よかった
ただ、この思いが身体中を巡った
「……ぅぶ?
……ちゃん、大丈夫?」
肩に、トントンと、何かが当たっているような感覚がして、そっちの方を見ると、こそには、マネージャーさんがいた
「真輝ちゃん、大丈夫?」
「………はい」
マネージャーさんを見ると、目は涙目で、少し手が震えていた
やっぱり、怖いよね……
男子が全力とはいかなくても、力強く打ったスパイクが事故でも、自分の方に向かって来たんだから………
「ほんと、助かったよ
真輝ちゃんがいないと、私、死んでたかも
……ふふふ」
やっぱり、可愛い人がそういうことを言うのはズルい……
「ケガ、ありませんでしたか?」
「うん
真輝ちゃんが、守ってくれたから」
そう言って、私に微笑んでくれた
「よかったです」
私まで、つられて微笑んだ
「あのね、今更なんだけど、私、自己紹介してないよね…」
「あっ、はい……」
「私は、1年2組 神崎 陽奈乃っていいます
真輝ちゃんが、敬語だったから、先輩だって思われてるかもって思って、自己紹介してないの思い出しちゃった」
陽奈乃ちゃんは、きっと男子バレー部の紅一点になるんだろうなぁ〜