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ひとつだけ 【ハイキュー!!】

第4章 再会





「あぁすいません。カードのサインで見ました。」



…私の訝しげな雰囲気で察されたらしい。
ちょっと考えれば分かることなのに、一瞬怪しがってしまったことが申し訳ない。


それにしても2回しか会ってないし、ろくな会話もしてないのに覚えてるなんて、
よほどまめな人なのかな と考えていたら、その答えもすぐに返ってきた。








「俺の名字と似てたので、覚えてました。」






……え?
思わず彼をまじまじと見てしまった。
彼もそんな私を見ながら続ける。







「珍しいですよね、1文字違い。
俺は初めてだったんで驚きましたけど。」






アカアシさんの言葉は、私が彼のカードを見たときの感想そのもので。


………アカアシさんも、私と同じこと、考えてたんだ。
向こうも少しは気にしてたんだ。


私だけじゃ、なかった。



私だけじゃなかった。

些細なことだけれど、それだけで あの日から今まで 1人でモヤモヤしていた心が、ちょっとだけ晴れていくような気がした。






…でも、言われた言葉と 少し上がったように見える口角から、
あの時のことをアカアシさんも覚えていて、しかも私が手を止めた原因まで分かっているってことが伝わってきて。
それはなんだか気恥ずかくて、思わず顔を下げる。



目に入ったのは彼の個人カード。

そこに書いてあることは 当たり前だけど、前に見たときと変わらない。


『アカアシ ケイジ』は漢字で『赤葦 京治』って書くんだっていうこと。
クラスは2年6組なんだっていうこと。

それだけ。

5分前の私が知ってたことも、それだけ。






だけど、この5分で それ以上赤葦さんを垣間見られたような気がした。








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