第8章 過去
「仁花ちゃんは、何が怖い?」
谷地「……人が……怖いです。」
「手術台の上にいる人が?」
谷地「それも……そう、、なんですが……」
「手術をしてる私たちが?」
谷地「はい……。当たり前のように人を切って……たくさん、、血が……うぅ、っ、」
「仁花ちゃんは、優しすぎるんだね。」クスクスッ
谷地「いえ……違うんです。分かってるんです!!私も人を助けたい……。だから、、」
「うん、分かってるよ。大丈夫。」
谷地「先生は、いつも完璧で……本当に…憧れます。先生みたいな強い人になりたいです……。」
「あははっ、強いフリしてるだけ。院長の娘が弱いなんて、カッコつかないでしょう?」
谷地「……。」
「強いフリをしてたから、何も怖くなかったの。でも……」
谷地「……?」
「何年前かな…あれは、本館に研修に来てた時かな。20歳になってすぐ。初めて手術に失敗して、人を殺めてしまった時……私の…自分の鼓動が聞こえなくなったの。」
谷地「鼓動が……とまった……?」
「殺めてしまった時ね、その場に呆然としてしまって。家族に合わせる顔もない。院長の娘なのに。院長に合わせる顔もない。帰る場所がなかったの。そのまま、手術室で倒れて。」