第2章 故郷の色【イゾウ】
あ…隊長だったんだ
『さっきこの三人にあった。』
そう言って、三枚の手配書を抜き出して広げると、皆んなが覗き込んでくる。
「この三人が強姦未遂の奴らなの?」
あたしを部屋まで呼びに来てくれた子がすかさず聞いてきた。
「え?何それ!あんたヤられちゃったの?」
周りがざわざわし始めるのを早く鎮めたくて、早口で事の顛末を話した。
『────だったの。』
伏し目がちで話し終えてみんなに目を向けた。と、その瞬間。
「「「おバカーっ!!!」」」
予想以上に責められる気がしてきた。
「上客になるかもしれないのに、何やってんの!本当に口悪いんだから」
「ママの営業活動が無駄になったらあんたどうすんの、バカたれ!せめて店の名前は出さないでおきなさいよ!」
『だって、白ひげ海賊団の隊長だなんて思わなかったんだもん。一人は確実に下心ありのエロい顔してたし。』
ぎゃいぎゃい騒いでたらお姉さま方の一人がクスクス笑いながら言った。
「隊長さんになるくらいなんだから、器の大きい方なんじゃないかしら?心配しなくても皆さんでお見えになると思うわ」
それに続くように他のお姉さま達も話し始める。
「そうね。ママの口ぶりからすると船長さんとは親しいみたいだったわよ?大丈夫だと思うけれど」
「ヒイロ、四皇のクルーの手配書くらい覚えておきなさい。いつどんな事がきっかけでお客様になるかなんてわからないんだから。」
『はぁーい』
“お姉さま”はこの店に長く働いている人達の事。あたしがふざけて“お姉さま”と呼んでるうちに、その呼び方が定着した。一体今幾つなのかは謎の美女達だ。あたしの事を小さい頃からみているせいかいつも可愛がってくれる。この仕事のいろはをママと一緒に教えてくれた彼女達には逆立ちしたって敵わない。お客さんへの対応もベッドの上でのテクニックも。
あたしはそれ以上責められなかった。ただし、宴会中はマスターのお手伝いを命じられた。つまりほぼウエイター、お客さんに付かないってこと。あんな事があった後じゃ気まずいから好都合、ホッとして宴会までの時間を過ごすことにした。