第2章 故郷の色【イゾウ】
あたしはカラダを起こすと乱されてしまった服を整える。と言っても服のボタンはあらかた弾け飛んでほぼ無いんだけれど。そんなあたしにリーゼントが話かけてきた。
「間に合って良かったぜ。可愛い子がフラフラしてたらまたあんな輩に捕まっちまうぞ?送ってやろうか?」
……顔がイヤらしい。なんだこの男。襲われてしまった苛立ちであたしの頭は混乱中だった。その為、世の中の人々が恐れる白ひげ海賊団であろう男にとんでもない暴言を吐くことになる。
『あたし、頼んだ?』
「ん?」
『助けてくれって頼んだかって言ってんの。余計なことしないで』
「なっ、お前、どう考えても今の状況の後の第一声目は“ありがとう”だろう!」
そんなリーゼントに冷めた視線を向けてあたしは続ける。
『あんた達はいずれこの島から出て行くでしょ?出て行った後にあいつらからしょうもない嫌がらせとか受けることになったらどうしてくれる訳?どうもしてくれないでしょ?だったら最初から手出さないでよ。ありがた迷惑。」
「はぁ!?可愛くねぇ女!」
『さっき可愛いって言ってたじゃない。予想外の展開だったからって暴言吐かないで。』
「暴言吐いてんのはそっちだろ!お前の言葉の暴力で俺のハートはボロボロだよ!お前みたいな女にゃ2度と会いたくねぇ!」
『カサブランカ』
「あ!?」
『あたしが働いてるお店の名前よ。カサブランカに来ない限りもう会う事もないでしょ。さようなら、お節介さん』
彼らの横を通り過ぎる時、横目でチラリと見るとさっきまで無関心だったキモノの男の口元が緩んでいた。微かに
「とんでもねぇ野良ネコだな」
と聞こえた気がした。