第2章 故郷の色【イゾウ】
男たちの荒い息遣いがやけにはっきりと聴こえる気がするのは、頭が冴えているせいだろう。
下着に手を掛けられてずらされるその瞬間
「お!真っ昼間っからお盛んだなぁ」
人をからかう様な愉しげな声がした。そちらを向くと人影が三人。
こんな状況冷やかすなんて、いい根性してる。
あたしを組み敷いていた三人の注意がそちらに向いた。
「何だてめぇらは?」
「今、お楽しみ中なんだよ」
「怪我したくなきゃとっとと失せろ!」
チンピラ達の怒声が響いているのに、現れた三人の人影はそんなの全く意に介していなかった。
「ほら、マルコ!やっぱりすげぇカワイイじゃねぇか!いや~見過ごさなくて良かったぜ」
「…物好きもいい加減にしろよい」
リーゼントと、マルコと呼びかけられていたパイナップルが何やら言葉を交わしている。そんな二人の会話に入らずに煙管をくわえている男。
『キモノ?』呟くようなあたしの声に気が付いたその男と目があった。けれども、全く興味がないのか直ぐに逸れてしまった視線。
キモノを着た男の人って初めて見た…
ぼんやりと眺めている目の前では、あたしを組み敷いていた男達が今にも掴みかからんばかりになっていた。
「いやーダメだろ、こんな可愛い子を公衆の面前でどうにかしようなんてバチ当たるって」
本気なのかおちゃらけているのか、不敵な笑みを浮かべて話しているリーゼント。呆れ顔のパイナップルと無関心なキモノ…誰?
そう思っているとチンピラ達の内、1人がハッと何かに気付いた様な顔をして、一転 リーダー格の男を止め始めた。
「あ゛ぁ!?」
そう言って振り返った男に何やら必死な顔で伝えているけどこっち迄は声が届かなくて断片的にしか聞こえない。
「ヤバい」って言葉が頻りに聞こえて「白ひげ」って単語が出た辺りでチンピラ達の顔色が変わった。
急に怯えた顔をして物凄い速さで逃げて行く3人を見送りながら、こいつら白ひげ海賊団のクルーなんだと理解した。