第2章 故郷の色【イゾウ】
ー現在ー
あたしは、自分の働くお店の二階からぼんやりと外を見ていた。
今日はこの店だけじゃなく、島全体がざわついている。
理由は四皇として名高い白ひげ海賊団がこの島に上陸したから。
昼間に商売をしている人の中には海賊にやたらと怯えている人もいるらしい。
だけど、この店のように酒が飲めて娼館も兼ねているような店は 海賊=お客様。
その為、朝からやたらと活気付いている。
こっちは最後の客が帰ったのが今から数時間前だって言うのに、本当に朝から騒つくのは勘弁して欲しい。
若干不機嫌な顔で煙草をふかしていると、この店のオーナーであるママから声をかけられた。
「ヒイロ!あんた今日病院の日だろ?ちゃちゃっと行って診てもらってきな!今日は客の入りも良さそうだし、忙しくなるよ」
“ママ”は勿論あたしの親じゃない。若い頃はうちらみたいに娼館で働いていたらしい。
でも、その店は働いてる女への待遇が最悪で ママは
「女がもっと安心して働けるお店を作ろうと相当に頑張ってこの店を作った」
らしい。
『もっと安心して働けるお店にしたかったなら、もっと健全なお店を開けばよかったのに。』
そう言ったら、
「こういう世界でしか生きてこなかったから、これしか思いつかなかった。」
って笑ってた。
口うるさい所もあるけど、店の女を第一に考えてくれている。だから、親しみを込めて“ママ”なのだ。
この店は定期的に病気の検査を受ける決まりになっている。不特定多数の男を相手にする職業だから、そういう病気は大敵。
今日はあたしが病院に行く日なのだ。
本当はもう少し寝てから行きたい。でも、こんなに騒ついていたんじゃ眠れないし、病院に関してはママも相当口うるさくなる。
そういう時はさっさと検査に行って白黒はっきりさせた方がいい。
今までの経験からそう判断して、あたしはだるい体を動かした。