第1章 月夜【レイリー】
目覚めると、窓から光が差し込んで部屋の中を明るく照らしていた。
起きぬけの頭でボンヤリしていると、昨夜の記憶がサーっと蘇ってくる。
昨日の選択に後悔は無い。もう一度昨日を体験出来たとしてもきっと同じことをするだろう。
隣で眠るレイさんを見てそんな事を思いながらシャワーを浴びる為にそっとベッドを抜け出した。
シャワーから戻ると、そろそろ起こそうかとレイさんに近づく。
揺り動かそうとした瞬間、手を掴まれて布団の中に引きずり込まれる。
『ひゃあっ』
「目覚めた時、隣に誰も居ないのは寂しいものだな」
『ふふっ、おはよう。それは悪いことしちゃったわね』
首すじに唇を寄せて来る彼をなだめながらまた声をかける。
『ホラ!シャワー浴びて来て?朝ごはんの用意始めるから』
「続きは無しか?」
『そういうコトは日が高いうちはしちゃいけないの。』
ホントに元気なんだから…と思いながらキッチンに立って二人分の朝食を手早く用意していった。
一通り準備が済むと、ふとこれから自分はレイさんとどうしたいのかと考える。
わたしがまた会いたいって思っても、レイさんはもう会わないつもりかもしれないしなぁ
一晩だけのお付き合いだったのかもだし…
あ、やばいなんかへこんで来た。そんな事をぐるぐる考えていると、不意に後ろから声がかかる。
「さっきから何百面相しとるんだ?」
ビクッとなって振り向くと、レイさんは微笑んで私を見下ろしていた。
『なんか、昨日もそんな事言われた気がする』
「そうだな、ニレは見ていて飽きないよ」
『完全に面白がってるじゃない』
「いや、面白いというより…危なっかしいの方がしっくりくるな」
『この年令でそう言われるのってちょっとマズくない?歳相応に落ち着いてるつもりだったんだけど』
笑いながら頭を撫でられると胸がキュッとなる。