第1章 月夜【レイリー】
隣に横たわっているニレ。こちらを見てはいるが、何となく焦点が合っていない。
「大丈夫か?」
『…終わっちゃったな と思って』
「何だ、もう一回す『そうじゃなくて!…朝まで一緒に居てくれる?』
「あぁ。そのつもりだ。そんな事を心配していたのか?」
そう答えると仔犬みたいに寄り添って来た。先程までの行為で上がった体温のせいでしっとりしたカラダを抱き寄せるとホッとした表情を見せた。
『終わってすぐ一人になるのはキライなの』
「そんな薄情な男ではないつもりだが」
『言ったでしょう?レイさんはよくわかんないって』
「勘は良い方なんだろう?」
『謎多き人には適用されないみたい』
そんな会話をしながら、頭を撫でていた。
ニレと出逢ったのは偶然で、しかもマスターの知り合いならば 手を出すなんて考えもしなかった。
こうなってしまったのは、どういう巡り合わせだろうか。
考えているうちに腕の中から寝息が聞こえてきた。
無防備な寝顔は さっきまで嬌声をあげていた人物とは思えないほど純粋に見える。
ただ、いちごのように赤くぽってりした唇だけは艶めかしい雰囲気で…其処に引き寄せられるように口づけして自分も夢の中に落ちて行った。