第68章 悩み*茶倉
「私の悩みを聞いてくれた優にお礼ね。」
下校の時間も時間も迫ってきて、帰る準備を整えながら言った。
「私なりの人を好きになるって気持ち。」
思わず体が跳ねる。
私が求めるものに近づけるのではないかという光を浴びる。そんな緊張。
紗音は自分の胸に手をおいた。
「自分の心に従うこと。」
「え?」
理解が追いつかず、首をひねる。
そんな様子を察して、答える。
「私の場合、好きな人っていうのは幸せを共感できる人。その人が幸せなら自分も幸せだなーって思える人。その人が笑顔なだけで、私まで笑顔になっちゃうような、そんな人。
つまりね。自分の大切にしていること、やりたいこと…自分の心に当てはまる人を好きになるんじゃないかなって思うんだよね。」
「自分でも何言ってるかわからなくなってきた…」と照れながら笑う。
「大丈夫。わかったよ、ありがとう。」
その笑顔に答えるように、自然に笑顔になっていた。
紗音の言葉は心に素直に入ってくる。
また一歩、進める気がした。
「今日は楽しかったよ。またね。」
「うん、また話そうね!」
正門で分かれ、1人になる。
一人になっても紗音の言葉は共にいた。
自分の大切にしていること。
やりたいこと。
自分の心に従う。
心は答えを知っている。
私は…。
私の心は…。