第69章 デート*高尾
目を開ける。
もちろんそこには桜の木などはなく、見慣れた自分の部屋の天井だった。
視線を少しずらす。
時計のはりは6:30を超えたあたりを指していた。目覚ましをセットした時間よりも早く起きてしまった。
それは待ちに待ったデートのせいか、それとも先ほどの夢のせいか。
(何だったんだ、さっきの夢…)
オレの中で、少女は桜の妖精のように映っていた。
ふわふわとどこかに飛んでいってしまいそうな無邪気さなんて、妖精という言葉がぴったりだな…と寝起きの頭で思う。
それでもさっきの夢を不思議に思いつつ、ガバリと起きあがった。
夢について考えている余裕なんて今日のオレには無い。
なんてったって今日はデートなのだ。
それも大好き優ちゃんと。
片思いだからって関係ない。
デートはデートなんだ。
世の男子高校生たちに自慢したいくらいだ。
あんな可愛くて、優しくて、何でも出来る子とデート出来るんだぜ?
こんな幸せあるかよ。
そういや春には青春してぇとか思ってたっけ。そこには恋愛も含まれていたわけで。
(やべぇ、オレめっちゃ青春してんじゃん。)
用意をしながら、ふとそんなことを思った。
あの時はまさかこんな事になるなんて思っても見なかった。
始まりは衝撃的で。
まだ結末はわからない。
そんなオレの青春物語。
でも確かにいえることもある。
人生一度きりの高校生活を秀徳高校で送れて良かった。
オレは青春を謳歌してるってちゃんと感じられるから。そしてそれはまだまだ続いていくから。