第68章 悩み*茶倉
「…凄いね。」
柔らかく微笑む紗音は、私の答えを聞いてそう呟いた。
「何が…?」
言葉の真意がわからず聞き返せば、「悩みってね。」と紗音が答えてくれた。
「悩み相談に求められる回答って二種類に分けられるんだ。一つは“方法”を求めるもの。こっちの方が一般的かな?自分がどうすればいいか、道を示してほしい。そんな悩み。……そしてもう一つは“自信”を求めるもの。」
「自信…。」
「そう、自信。自分の中で答えは出ているのに、この道でいいのか不安が残ってる。誰かの後押しを待っている。」
なるほど、と表面的に理解する。
きっと悩みと向き合う彼女にはもっと深い意味があるはずだから。
「今の私の場合は後者だった。優の回答はそれをわかった上でだった。だから、凄いって思ったの。」
「そんなこと全く考えてなかったよ…。」
「なら、優はそれが無意識に出来ちゃうってことだね。」
「た…偶然でも紗音の力になれて良かった。」
「たまたまだよ。」と否定しようとして止める。ここで違うと言ったって、彼女は私を褒めるだろう。紗音は人を否定しない。そういう子だ。
やっぱり普通とは違うかもしれない。
「ね、ね!優に聞いてもいい?」
ぼんやりとしていた私を心配しつつ、好奇心を持った声。
無邪気にそう聞かれれば、頷くしか出来ない。
「私に出来ることなら…。」
私が力になれるかはわからないけど、紗音のために何かしたいと思った。
そう思わせる“何か”がやはり彼女にはあるようだった。
目を光らせた後、内緒話でもするように声のトーンが落ちる。
そして、直後。
その言葉に私は硬直した。
「優って好きな人いる?」