第65章 記憶と思い出*緑間
『皆さん、こんにちは!‘秀徳の昼下がり’のお時間です。今日の担当は私、高校一年三波紗音です!』
沈黙の中で聞こえる昼の放送。
「これって同じクラスの…」
高尾の呟きと放送がやけに大きな音に感じられたが、悪い気もしなかった。
三波が放送に乗せて柔らかな声を届けてくれるからだろうか?
『今日は例年よりも暖かくなっていますね。外でご飯を食べている方も多いのでは?放送室からも綺麗な青空と活気ある生徒の様子が見えますよ。』
その言葉で、目を窓の方へ向ける。
高尾も同じことを思っているらしく、顔がそちらに向いていた。
…茶倉は今、この空を見ているのだろうか。
……この空を見て、何を思うのだろうか。
素直に綺麗と思えていればいいのだが…
あいつの大好きな空はこんな時に限って、青く澄み渡っている。
心にその青さが染みるような錯覚を覚えた。
青に浸食されそれ以外のことが全部抜け落ちてしまうような、そんな錯覚を。