第64章 知らされる過去*茶倉
「………」
焦り。
驚き。
悲しみ。
戸惑い。
苦しさ。
処理できない量の感情が私を襲う。
(え……そんな、まさか…)
『嘘』と決めつけられればどれほど楽か?
でもこの状況はそんなことをさせてくれない。
このタイミングで千秋が本を持ってきたこと。
過去の記憶に残る言葉たち。
私と同じであろうシチュエーション。
どれも偶然の一言で片付けられるものではない。
体が小さく震える。
それは自分でもわからない過去を不安に思っていることの表れだった。
そして。
(…千秋って何者なの?)
そんな怖い疑問を私に植え付けた。
(…千秋はなにかを知っている。私の知らない過去を…)
なぜ知っているかはわからない。
でも、…いやだからこそ聞きたかった。
ちゃんと向かい合って受け入れたい。
……それが私の一番望まなかった事実であっても。