第64章 知らされる過去*茶倉
「どういうことですか?!」
食い気味で聞き返す。
「悪い…もう、仕事の時間だ…」
少し申しわけなさそうな顔をする。
さすがに引き止めるわけにもいかないので、聞きたい気持ちをぐっと抑えた。
「次、必ず話すから…」
広角が僅かに上がる。
私もつられるように笑みを浮かべていた。
「わかりました。ええっと…」
(そういえば名前聞いてない…?)
「…白井千秋。千秋って呼び捨てでいい。あと、敬語禁止。」
察したように自己紹介してくれて、凄いなぁと感心した。
「あ、うん!私は茶倉優。よろしくね、千秋!」
やっと自然に笑えた気がする。
「あ、そうだ。」
帰ろうとしていた千秋は鞄を漁ると一冊の本を出し、それをベットの側の机に置いた。
「これは?」
「読めばわかる。……次、来るときまでに読んでおいて。」
「う、うん?」
よくわからないまま本を受け取った。
私が受け取ったのを確認して、千秋は仕事に行った。