第64章 知らされる過去*茶倉
「助けてくださってありがとうございます。」
邪険に扱うことも出来ないので、作り笑いを浮かべる。
「たまたまいただけだ。気にするな、優。」
(!…私の名前)
違和感が広がっていく。
お母さんに聞いただけかもしれない。
でもそれなら優って呼ばないはず。
「もしかして、どこかでお会いしたこととかってありますか?」
質問に淡い期待を込める。
なにに期待しているのかは自分でもわからないけど。
「いや…会ったのはこの前が初めてだ。」
「そうですか…」
声のトーンが下がってしまう。
なんだかこの人のこと…知ってるような気がするのに…
「でも…前から知っていた、お前のこと。」
なにかを懐かしむように目を細める。
「え!?」
完結したと思われた話を続けられ、その言葉は私を驚かせた。