第61章 運命の日*茶倉
私を諭すように、ゆっくりとした手つきで頭をなでてくれる。
髪に絡むその優しい温もりに涙は留めなく溢れた。
「優には言っていなかったが…こうなることは知っていた。お前がいつか記憶を失うことを。」
「え…」
言うのをためらっているのだろうか?
天を仰いでいる。
やがて決意したように、私の目を見据えた。
「『映像記憶』…あらゆる事象を記憶するその能力の代価もまた記憶………そして、その時のために、無意識にお前の中に生まれた『過去の記憶を保存する媒体』が…妾ということだ。」
「?!」
いきなり述べられたことに呆然としてしまう。
「だから、別れも運命だったのだ…まあ事故まではさすがに予想しておらんかったがのぅ。」
私を励ますようににっこり笑う。
「それに……お前のことはあいつらが守ってくれるだろう。」
「あいつらって…?」
「高尾と緑間。…認めたわけではないが、あやつらなら信用できる。…することにした。」
私は突然出てきた名前に驚きを隠せない。
和くんと真くんがなんで…?
……ザザザッ…!
また桜の花びらが音を立てて散る。
「時間か…。」