第59章 素直な気持ち*橘
「でも…私、誰が好きなのか……」
「それが素直な気持ちでしょう?『まだ誰も好きじゃない』っていうのが。」
あたしの言葉を聞いて、優は少しだけ目を見開いて、それからこう尋ねてきた。
「そ、それでいいんですか……?」
「いいも何も、それが優の素直な気持ちでしょ?…もう一つ先輩としてアドバイスね。『男の仕事が真剣な気持ちを伝えることだとしたら、女の仕事はその気持ちに誠意を持って答えることだ。』」
「誠意…」
そう。嘘をつくのは、ダメだ。
それがわかったらしい。
「私…2人に伝えたいと思います。私の『素直な気持ち』を……ありがとうございますっ、紅子先輩っ!」
吹っ切れたのか、はにかんだ笑顔を見せてくれて、心底安心した。
「善は急げよ。もう帰りなさい。」
「はい、そうされていただきます!さよなら…!」
ああ…ホント素直な子。