第59章 素直な気持ち*橘
「素直になれば?」
言い切った優に、あたしはそう言ってのけた。
優はというと意外だったのか、目をパチクリさせている。
「聞いてみればいいと思うけど?『私のどこが好き?』って。」
「こ、紅子先輩っ?!」
そんなの無理と訴えるように驚いた声を出す。
そんな優が可愛らしくて、思わず吹き出してしまった。
「まあ、それは冗談だとしても……でも…あなたが素直になることを恐れることで、あなたに思いを伝えた人が傷つくのなら、素直になって傷つけた方が、ね?」
今回のような状況が誰も傷つかないで終わる方法などない。
それは優もわかっているはず。
だったら今の状況から逃げて誰かが傷つくのよりも、向き合った方がよっぽど良いだろう。
少なくともあたしはそう思う。
「優の今の素直な気持ちをぶつけてみたら?」