第58章 風邪。*茶倉
吐息がかかるくらいの距離に息が止まる。
「悪い…」
先に動いたのは真くんだった。
顔が遠ざかっていく。
「…ーーー」
私に聞こえないくらいの声で何かを呟く。
「真くん…?」
「お前が心配なのだよ。」
『心配』
その言葉に少しの嬉しさと少しの申し訳なさが入り混じる。
「うん…」
結局曖昧な返事しか出来なかった。
「俺が言うのも可笑しいがな…」
私の返事をどうとったのかはわからないけれど、真くんは自嘲的に笑った。
そして紅茶を一気に飲み干すと「もう帰るのだよ。」と言った。
「じゃあね。」
「ああ。お大事に。」
「っ……!」
ドアにもたれながら私は泣いた。
そんな資格無いってわかっているけれど、涙は止まらなかった。