第56章 コワレユクヒビ*茶倉
「……優ちゃん。」
突然の低い声に、体がビクリとする。
(……いつもの和くんじゃない。)
直感的にそう思った。
いつものような明るい感じが全くない。
あるのは真剣な顔だけ。
「男っていうのは、単純な生き物なんだぜ?…好きな子からそんなこと言われたら……」
思わず後ずさりすると背が壁についた。
そうなることをわかっていたかのように、和くんは両手を私の顔の横についた。
……動けない。
そのまま顔が近づいてきて……
唇を奪われる。
キスの後、ゆっくりと腕が下ろされた。
「逃げるんだったら今のうちだぜ?」