第29章 明かされる過去~前編~*茶倉
車は急に止まれない。
そんなこと何回も聞いていたけど、今初めて実感した。
運転手さんが驚いた顔してる。
なんてぼんやり見てる場合じゃないけど。
キキィーッッ!!
その場に大きなブレーキ音が響きわたる。
猫ちゃんは驚いて逃げてしまった。
(ああ、死ぬのかな…?)
自分のことのはずなのにどこか他人事のようで…
夢か現かもうわからなかった。
「危ないっ!」
一人の男性がこちらに飛び込んでくる。
(えっ?)
なんで?
なんでこの人は飛び込んできたの?
何でこの人は私をかばおうとしているの?
何で守ろうとしているの?
やっぱり夢?
ドンっ!!
鈍い音がして、体に痛みが走る。
(あ、現実だったの…?この人の血…?なんで…)
「…!……!」
(なに…言ってるの?)
血のついた男性がこちらに向かって何か言っているようだ。
(わかんないや…)
私はゆっくり意識を手放した。