第7章 伝えたいキモチ〔千〕
「会えばいいじゃん。好きなんでしょ?本当は会いたいんでしょ?」
「簡単に言うけど、僕らはアイドルだよ」
「いいじゃん、そんなの。オレだったら迷わず弥澪のとこに行く!」
彼は呆気なく答えてくるが、その顔は真剣そのものだった。
「ユキのことはユキ自身の好きにしていいって、オレはそう思う」
「モモ……」
もう一度メールを開きしばらく考え込んだ後、僕は弥澪にメールを返した。
『18時ごろに収録が終わるから、それ以降なら』と。
(どうしよう……)
収録中、僕は内心でとても焦っていた。
スタッフたちの後ろにかけられた時計は19時半を過ぎている。
途中、機材の調子が悪くなり、収録が度々止まってしまっていたのだ。
弥澪に連絡を入れたかったけれど、携帯は楽屋に置いてきてしまって、すぐに収録を再開する状況では取りに戻ることも出来なかった。
(お願いだ……早く……早く終わってくれ……)
僕は珍しく仕事に集中することが出来なかった。
それはモモにも伝わっていたらしい。
時折心配そうに僕を見ては、困ったような顔を見せていた。
ようやく終わった頃には、20時を過ぎていた。
楽屋に戻った僕は大慌てで携帯を開く。
案の定、弥澪からはメールが届いていた。
けれどそれはたった一回だけ。
届いていたのは19時ごろ。
『お仕事、長引いていますか?』とだけ。
なんと返事をしようか迷った挙句、『ごめん。収録が押していたんだ』とだけ返した。