第7章 伝えたいキモチ〔千〕
(駄目だな、僕は……)
完全に口の中で溶けきったチョコの味を感じながらそう思う。
モモみたいに素直に言えたらいいのにと、何度も思った。
いいや、モモでもこんなことは流石に言えるわけがない。
言ってはいけないだろう。
すぐ隣で笑う彼女に、好きだという気持ちを伝えられないことがひどくもどかしくて、僕は自然と黙り込んでしまっていた。
そうすると何故だか余計に苦しくなってくる。
「嫌だな……」
「何がですか?」
無意識で言葉にしてしまったのか、弥澪は不思議そうに首を傾げた。
何でもないと誤魔化すと、さらに首を傾げられた。
それでもまだ本当のことを言えなくて、その日は複雑な気持ちのまま別れてしまった。
「……キ、ユキ!!」
名前を呼ばれて顔を上げると、モモが目の前まで迫っていた。
「やっと反応した!何を考えてたのか知らないけど、モモちゃんを無視するなんて!チューでもしてあげようかと思っちゃったよ!」
「ごめん、モモ。少し……」
「弥澪のことを考えてた?」
「なっ……」
「あ、図星?」
モモはおかしそうに笑うけれど、僕はいつも通り笑うことが出来なかった。
というのも、さっき来た弥澪からのメールに『今夜空いていますか?』と書かれていたからだった。
空いていないから困っているわけではない。
むしろ空いていることに困っていた。
嘘をつくのは嫌だったし、かと言って彼女に会うのには気が引ける。
どうしようかと悩んでいるところにモモが声をかけてきたということだ。
それを話すとモモは当たり前のように答えた。