第6章 ★笑顔の作り方〔天〕
ぎゅっと閉じられた目がわずかに開き、なにかを訴えるような光を見せた。
ーーーやめたい、けど、やめたくない
どうにも弥澪は自分の物事を決めるのに手間がかかる。
本当に自分のしたいことを理解していないらしい。
多分いつも自分の本当の気持ちを抑え込んでいるせいなんだと思う。
素直ではない、といえば嘘になる。
けれどその素直な感情を表に出すことを苦手としている。
弥澪の本心を掴みづらいのはそれも原因だった。
ーーー天が、ほしい、でも、今日は、怖い
なにが、とは聞けなかった。
さっきの違和感は多分弥澪の迷いだったのだと思う。
ーーー教えて、天
弥澪は震える手でそう言った。
そこでボクはようやく気がついた。
「なんで泣くの?」
ポロポロと情けなく涙を流す弥澪。
ボクの背に腕を回し、必死にしがみついてくる。
背中に何かを書かれた。
でもこの状態だと文字がひっくり返ってなんて言ったのか分からない。
だからせめて顔だけでも見せてほしいと体を起こそうとすると、今度は先ほどよりも強くしがみつかれた。
ゆっくりとなぞる指の動きを必死にたどる。
(私、の、こ、と…………嫌、わ、な、い…………で、い、て、く、れ、る?………………なに、それ)
「なにそれ……」
心の中で言ったはずが言葉に出てしまった。
少しばかり怒りを帯びた声になってしまい、弥澪が驚いたように腕を解いた。
「嫌わないでいてくれるって、なんなの、それ。ボクのこと、信用していないわけ?」
また首を横に振られた。