第6章 ★笑顔の作り方〔天〕
「もう一つ、ボクの言うことを聞いてもらうよ」
また首を横に振られた。
さっき拒否された時よりも盛大に。
だけどそんなことお構い無し。
ボクもやると決めたことは最後までやる人間だ。
「ボクと、エッチして」
「!」
ボフンという音が聞こえるような感じがして、弥澪の顔が今日一番真っ赤になった。
突然なんだとでもいうように身を引いてしまう。
ボクだって性欲がないわけではない。
かといってそんな軽い男でもない。
ただ、最初に何でも言うことを聞くと言われた時に思ったのは、今日は弥澪を抱きたいということだった。
だから耳掃除はその準備段階的なものであって、ボクの本当の望みはこっちだ。
「いまさら赤くなる必要なんてないでしょ。今まで何度もしてきたんだから」
そう言われても恥ずかしいものは恥ずかしい、と弥澪は目で訴えていた。
その目を塞ぐように手で覆い、僅かに開いた唇にキスを落とす。
てっきり抵抗されるのかと思っていた。
だけど、弥澪はあっさりボクを受け入れた。
「……本当に嫌ならそう言ってよね」
また首を振られた。
ーーー嫌じゃない
はっきりと口元が動いた。
たったそれだけなのに、ボクは彼女が愛しいとつくづく感じてしまう。