第6章 ★笑顔の作り方〔天〕
「とりあえず、その耳かき貸して」
ーーー?
意外なことに弥澪は首を傾げながら耳かきを手渡してきた。
(これ、百円ショップに売ってるやつだよね)
どこからどう見ても安物の耳かきだ。
弥澪のお兄さんは高かろうが安かろうが、御構い無しに無駄買いする人なのは知っているけれど、
(……なんで耳かき……)
やっぱり彼の考えはよく分からなかった。
「次、ボクのここに頭を乗せて寝転んで」
床に正座をして膝を叩くと、弥澪はその意味を理解したようで顔を真っ赤に染めた。
ぶんぶんと頭を振って拒否するけれど、
「言うこと、聞いてくれるんじゃないの?」
そう言うと更に顔を赤くしながら小さく頷き、躊躇いながらも寝転んだ。
頰にかかった髪を退けるためにそっと顔に触れると、弥澪はピクリと肩を震わせた。
(くすぐったがり……)
ぎゅっと目を閉じてしまった弥澪の頬を撫でてみると、彼女は僕の膝あたりに指を這わせた。
―――やめて、くすぐったい
弥澪の反応が可愛くてつい悪戯をしたくなってしまう。
だからやめてと言われてボクはやめなかった。
髪を梳いて耳に触れる。
そしてそのまま息を吹きかけた。
すると今度は膝をペシペシと叩いてきた。
「ごめん、やめてあげるから叩かないで」
苦笑しながら耳かきを持ち直し、弥澪の耳掃除を始める。
すると再び彼女は肩を震わせた。