第6章 ★笑顔の作り方〔天〕
結局勝負内容はにらめっこで決まった。
というのも、他に何をしようかと考えても良いものが浮かばなかったからだ。
正直弥澪に勝ち目があるような気はしない。
何かあるとよく賭けをするものだから、大体弥澪の勝ち率は出てきている。
彼女が勝つ確率は約十パーセント。
当然僕の圧勝だ。
分かりきっているうえでボクは勝負を受け入れる。
弥澪も負けると分かっているはずなのに勝負を仕掛けてくる。
よく分からない性格だと思う。
「……はい、君の負け」
程なくして決着はついた。
もちろんボクの勝ち。
三回勝負だと文句を言われて仕方なく相手をしてあげたけれど、それでもやっぱりボクの圧勝だった。
ーーーずるい
「なにが?」
ーーー天の顔、直視できない
「は?」
ーーーにらめっこなのに、真剣な顔して
「それって、ボクのせいじゃないよね?」
ーーーだって
弥澪はまた少し間をあけてから、
ーーードキドキするんだもの
そう、書いた。
ボクはいたって普通ににらめっこをしている。
無表情がおかしくて笑う人も時々いるからそうしただけで、弥澪を照れさせるためにしているわけじゃない。
それがずるいって、とんでもない言いがかりだ。
「とにかく君の負けだよ。ボクの言うこと、なんでも聞いてくれるんだよね」
ーーーうん
迷うことなく彼女は答えた。
意外と律儀で一度決めたことは中々曲げないタイプだ。
だからさっきの勝負を三回勝負だと言い張ったのは珍しい。
よほど耳掃除がしたかったのだろうか。