第6章 ★笑顔の作り方〔天〕
前に何故か瓶をいくつも持ってこられたことがあった。
その時は弥澪お手製の花梨の砂糖漬けをしまうのに使えたから良かったものの、使い道のないものを持ってこられた時はその対応に困った。
「……で、耳かきがあるから耳掃除をさせてほしいって?」
ーーーうん、駄目?
「駄目じゃないけど……君下手そうだから」
ーーーえ
「君、手先は案外器用だけど、耳かきは下手そうに見えるんだよね」
ーーーそんなことは
そこまで書くと少し間を空けて、
ーーーない、はず
頼りなさげにそう書いた。
ーーー多分
自信なさげに指が手のひらをなぞる。
最後の方はほとんど力が入らずになんて書いたのか分からなくなるほどだった。
ーーーじゃあ、勝負しよう
「なんでそんなこと……」
ーーー私が勝ったら、耳掃除させて
ーーー負けたら、なんでも言うこと、聞くから
煉華の脳みそは幼児並みたいだ。
いや、馬鹿だとかそんなことを言いたいんじゃない。
そう言えばボクがなんでも素直に受け入れるとでも思っているところが納得いかない。
「なら……別にいいけど……」
まぁ、そう言われてボクが受け入れないっていうことはあまりないんだけど。
そう答えると煉華はさも嬉しそうに指を早めになぞる。
ーーー勝負内容は、なにがいい?
「ボクが選んでいいわけ?」
ーーー私も出来る範囲で
「それは分かってるけどさ。君に出来ることって限られてるよね?」
ーーーだから、にらめっことか
「どれだけハードル下げればいいの。それは」
ーーーじゃあ、あっち向いてホイ?
「ほとんど低レベルで変わらないけど」