第5章 夫婦漫才とハロウィン〔百〕
いや、そんなことしてもどうしようもなくて、褒めたところでモモが調子に乗るだけだって分かってるんだけど。
「とにかく弥澪はとらないでよ?モモちゃんの大事な大事な子なんだから」
「…………僕なら彼女を幸せにできる力がある。君にはそんな力があるのかい?」
「ぷっ」
笑った。今モモが笑った。
僕の精一杯の台詞に笑った。
「ユキなにそれ!恥ずかしい台詞?オレの考えたのより恥ずかしいじゃん!」
「っ……モモが言えって言ったんじゃないか」
「後で弥澪の前で言ってみよう!どんな反応するのかな!?」
「絶対にやらないよ。恥ずかしさで茹で上がっちゃうから、僕がね」
たとえ本当に弥澪のことを奪おうとしてもそんなこと言えない。
まぁもともと、モモから大切な子を奪うなんてこと、するつもりなんてないんだけど。
★☆★☆★
オレと弥澪は幼馴染だ。
家が隣同士で毎日のように一緒に遊び育ってきた。
そしてRe:valeがインディーズだったころ、弥澪に誘われてライブに行ったのが、オレがRe:valeに入ることとなったきっかけだった。
いつの間にかRe:valeに憧れていたから、ユキのパートナーであるバンさんがいなくなった後、オレが代わりをすると言い出した。
新しい相方が見つかるまで、五年間だけでいいから、という約束を取り付けて。
その頃から弥澪はオレの後をちょこちょことついて回るようになった。
元々小鴨のように後をつけてくる性格だったけれど、この頃は特にオレの傍を離れようとはしなかった。