第5章 夫婦漫才とハロウィン〔百〕
必死に笑いをこらえながら控え室を出る。
けれど扉を閉めてしばらく歩いた時、耐えきれずに思わず笑い出してしまった。
「ユキ、どしたの?」
「いや、君たちが面白くってさ。見ていて毎日飽きないよ」
「そりゃそうだよ。オレと弥澪なんだもん!」
「理由になってないよ、モモ」
「とにかく弥澪はオレの大事な彼女なんだから、とらないでよね?」
「とらないとらない」
「そこは『どうかな?隙があれば奪ってやるさ。オレの魅力でな』みたいなこというべきだよ」
「なにサラッと恥ずかしい台詞言わせようとしてるの?」
「恥ずかしい台詞はセオリーじゃん!オレそう言われたら燃えてくるね。なにがなんでも彼女を手放しはしないってさ」
「モモの本気は怖そうだから、そういうのはやめておくよ」
「えぇーっ!つまんない!」
「モモはいつでもウルトラハッピーじゃないの?」
「確かにオレはいつも超絶エクストラマックスウルトラハッピーだけど、ユキがノッてくれないのはつまんないんだよぉ」
「なにその……超絶?エクストラなんとかって」
モモの言っていることがよく分からない。
多分滅茶苦茶すごいってことを表してるんだろうけど。
超絶とかエクストラとか、色々組み合わせ過ぎて意味が分からなくなっている気がする。
「超絶エクストラマックスウルトラハッピー。言ったオレもよく分かってないけど」
「分かってないんかい」
なのにそんな長いのをよく覚えていられたなと褒めてやりたいぐらい面白い。