第1章 ★とりっくおあとりーと〔一織〕
「もう知りませんよ。全部あなたが悪いんですから」
「あの、それどういう……んっ……」
問いかけの途中で再び唇を塞がれた。
私が後ろの壁に寄り掛かる形で彼はキスをしてくる。
待って待って待って。なんでこんなことになっているのか、さっぱりなんだけど。
ーーー私は『Trick or Treat』と言いました。
ーーーでもあなたはお菓子を持っていません。
ーーーだから悪戯をされても文句は言えませんよね?
悪戯って……こういうこと?
「んっ……ふ……」
閉じた唇をこじ開けるようにして一織くんが舌をねじ込んでくる。
その奇妙な感覚に思わず舌を出してしまうと、あっという間に舌同士が絡み合った。
「……何ヶ月ぶりですかね、こうしてキスをしたのは」
唇を離した一織くんがそう呟いた。
そういえば恋人になった数ヶ月前にキスをして以来、あれから一度もしていない。
あれ、これいいのかな。なんか遠距離恋愛中の恋人になっていない?
「だって忙しくて二人だけの時間なんてほとんどとれなかったから……」
「それもそうですね」
あれー?なんであっさり認めちゃってるのかなー?
私結構ショック大きいんですけど。
「でもそんなことどうでもいいですね。これからなんですから」
言い切った!『そんなこと』って言いきった!
自分から話切り出したのに!
「いいですか。これはお菓子をくれなかった罰です。あなたに反抗権はありませんからね」
「え、それちょっと酷くない?」
「酷くありません」
きっぱりと言い切る一織くん。さすがです。
「ひゃっ……」
一織くんの手が胸に触れた途端、思わず身をよじる。
すると顎を掴まれて正面を向かされたかと思うと、またしても唇を塞がれる。
顎を掴む手はそのままに、もう片方の手が私の胸を優しく揉み込む。
あれ……私、胸小さくないかな……こんなことなら胸の大きくなるマッサージしておけば良かった…。
なんてことを考えている間にも一織くんの手は動きを止めない。
「っ……やっ……」
いつの間にか顎を抑えていた手も離れていて、両方の胸を押し上げるようにして彼は顔を谷間に沈めた。
「柔らかいですね」