第4章 Happy Birthday 11/11〔百〕
私と楽くんが考え込むと、千くんが困ったように眉尻を下げた。
「せっかくモモに喜んでもらおうと思ったのに」
「千く……」
言いかけた私の言葉を遮って、楽くんの携帯が鳴り響いた。
「悪い、親父が呼んでるんで帰るわ」
父親である社長さんの突然の呼び出しに、今度は楽くんまでもが帰ってしまう。
残ったのは私と千くんだけ。
「どうしよう……」
と、部屋の扉が開き、一織くんが顔をのぞかせた。
「八乙女さんと逢坂さんが出ていくのが見えましたが、私はこちらに参加した方がいいですか?」
「…」
千くんに視線を向けると、彼は困ったように笑いかけながら首を横に振った。
「いいや、もういいよ。あとは帰って僕と弥澪で考えるから。なんだか今日は無理言ってごめんね」
あっという間にバラバラになってしまったことがひどく複雑のようで、千くんの表情はあまり良くなかった。
明日はケーキをお持ちしますのでと一織くんは言っていた。
共同スペースでは三月くんが丁度ケーキ生地を作っていた。
それを横目に私たちはIDOLISH7の寮を出た。
その後千くんの希望で別れ、私は一人で街中を歩いていた。
(私がもっと早く気づいてあげてたら……)
そうすれば千くんも相談しやすかっただろうに。
(とりあえず千くんに頼まれた会場の準備をしなくちゃ)
パーティ会場として千くんが選んだのは一つのバーだった。
すでに貸切で予約してあるから、自分が行くまで先に飾り付けなどをしていてほしいと言われている。