第4章 Happy Birthday 11/11〔百〕
千くんはおかしそうに苦笑していたが、やがて私の耳元でこう囁いた。
「モモの前で誰かが腹切りしたら驚くと思う?」
「……それはちょっと……驚くだろうけど……」
「大丈夫。血糊とか刃がひっこむおもちゃとか使えば問題ないでしょ?」
「そういう問題……?」
私は千くんの用意した用紙をじっと見つめてそう呟いた。
(ビックリドッキリって……千くんにとって百くんって一体……)
「千さんに一つお伺いしますが、百さんの好物は何ですか?」
一織くんが紙とペンを取り出しながらそう尋ねてきた。
好物、といえば一つしかない。
だがそれは一織くんも知っているはず。
それ以外でというのであれば、結構色々あると思う。
「モモは基本なんでも食べるからね。何が好きとかはよく分からないな」
「では、好みの味はありますか?」
「強いて言えば甘い系かな。桃とりんごのスパークリングも甘みがあるからね。多分そうだと思うよ」
「甘いものですか……」
そういえば前に百くんが大量の砂糖菓子を持ってきていたことがあった。
あの時は特に甘い物好きだと思っていなかったのだけれど、よくよく考えてみれば彼は典型的な甘党なのかもしれない。
それを伝えると一織くんは紙にケーキの図面を書き始めた。
あっという間に完成したそれを三月くんに見せる。
「兄さん、ケーキは生クリームたっぷりの、桃とりんごを基調としたものにしましょう。今からでも十分に間に合いますよね」
「材料があれば余裕で作れるな。よし!今すぐ作るか!和泉家特製ケーキ!」