第3章 家族〔陸&天〕
そんな中で最初に行動を起こしたのは壮五だった。
大きな照明の下に敷かれた二人の体。
それを見つけて壮五は咄嗟に叫んだ。
「陸くん!弥澪さん!」
「……壮五、さん……?」
「陸くん、無事かい!?」
「なにが起きたんですか……?オレ、弥澪に名前呼ばれて……」
それから陸は、はっとしたように自分を抱きしめていた人物に目を向けた。
「弥澪……?」
陸に覆いかぶさるような状態で弥澪が倒れていた。
それを見た壮五が小さく声をあげたのを、陸は聞き逃さなかった。
そして弥澪の体を支えながら起き上がった時、その意味をようやく理解することができた。
手に伝わるぬるりとした感触。
思わず自分の手を見ると、その手が真っ赤に染まっていた。
おそるおそる視線をずらすと、倒れた弥澪の左耳上あたりが赤く染まっている。
「き、救急車!救急車を呼んでください!早く!」
壮五が声を張り上げてスタッフたちに告げた。
呆然としていたスタッフたちはその声に慌てて動き出す。
「陸くん、そのまま弥澪さんの頭を動かさないで!誰か、タオルを持ってきてください!なるべく多く!弥澪さん、聞こえますか!?」
壮五が的確に指示を出す中、陸は弥澪を支えたままなにも出来ずにいた。
頬が痛み、血で濡れていない方の手をそこにやると、今度は自分の血がついた。
けれど自分のと弥澪のものではまるで違う。
そう判断した時には、陸の意識は暗闇へと落ちていった。