第3章 家族〔陸&天〕
「それじゃあ二人の席はここね。あとはうちの番組見てればわかると思うけど、どんどんツッコんでいいから」
収録の説明を受けている陸と壮五さん。
私は少し離れたところからスケジュールの確認をしていた。
今日はこの収録だけで終わるけれど、明日が思った以上に忙しい。
陸が体調を崩さないように配慮する必要もあって、少し心配な部分もある。
(でも最近、陸調子良さそうだし、大丈夫かな?)
そう思うものの、いつなにが起きるか分からないから油断は禁物だ。
カタン
(ん?カタン?)
なにやら音がして私は周りを見回した。
スタッフさんたちの声に紛れていたけれど、確かに音がした。
「弥澪!何か飲み物持ってる?オレ喉が渇いた!」
説明を受け終えた陸がこちらに手を振ってくる。
私はバックの中からアクエリを取り出すとそれを差し出そうと一歩踏み出した。
だが。
「!」
陸の立つ真上、そこに設置された照明がぐらぐらと揺れていた。
固定していた金具が外れ、今にも切れそうなコード一本でそれはぶら下がっている。
「陸!そこを……」
離れて、と叫ぼうとした途端、コードが重さに耐えられずに切れた。
今ちょうど陸の周りに誰もいない。
そして、私以外は照明に気づいていない。
「陸!危ない!」
咄嗟に私はペットボトルを放り出して駆け出していた。
きょとんとした様子の陸の頭上に照明が迫り…………そこに私は構わず飛び込んだ。
派手な音とともに照明が床に転がった。
スタッフたちは皆驚きにしばらく動くことができなかった。