第3章 家族〔陸&天〕
あまり音を立てないように扉を閉めてベッドへと近づいて行く。
「陸……」
毛布に軽く触れると陸がびくりと体を震わせるのが分かった。
「大丈夫だよ、陸」
なにが大丈夫なのかと聞かれても私にも分からない。
それでも不安いっぱいの彼にかけられる言葉はそれぐらいだった。
毛布の上から陸の体をギュッと抱きしめると、その震えがピタリと止まった。
「さっきはごめん。私なんでも一人でやろうとするから、いつも陸や天に迷惑かけちゃうんだよね」
「……」
「さっき天と電話で話したの。でもやっぱり駄目だった。天のこと馬鹿って吐き捨てて電話切っちゃった……」
「……」
「私、天ときちんと話がしたい。だから陸、あなたも一緒に来て」
毛布の中からくぐもった声が聞こえて抱きしめていた腕を解くと、目を赤くした陸が顔を覗かせた。
「……天にぃと話すって、何を話すの?」
「色々と、かなぁ……話さなきゃいけないことは山程あるんだから」
「話してどうするの?」
「どうするのか……って言われても何も思い浮かばない。どうするべきかなんてもっと分からないの。でもまずは真正面から向き合わないと」
そう、臆していてはなにもできない。
今はまず、天に会うしかない。
それでもまたあんなことを言ってしまったら。
(……私はもう……)
天と分かり合えることなんてなくなってしまうのかもしれない。
天に直接会おうと意志を固めて数日。
結局こちらと向こうの予定が合わずに、問題は未解決のまま時間だけが過ぎていった。
そんなある日、陸と壮五さんが出演するバラエティ番組の収録中、思わぬ出来事が起きた。