第3章 家族〔陸&天〕
街中でやけに賑やかな集団があったかと思えば、その中心にいたのは龍之介さんだった。
変装をしてはいたらしいが、ファンの女の子たちの目を誤魔化せなかったようだった。
人々に揉みくちゃにされながらも彼は私の姿に気づいて、その集団を抜けてきた。
そのあと少し話をしていると、自然と会話の内容は陸と天のことになっていた。
そこから話が膨れ上がり、今に至ったのだ。
(『天には俺から伝えておく』って言っていたけど、それって『私が連絡することを伝えておく』ってことだよね……?)
「弥澪?」
顔を覗き込まれて我に返り、思わず苦笑を浮かべてしまう。
どうやらそれが間違いだったらしく、陸の表情が心配そうに歪んだ。
「何かあったの?心配事?もしかしてメールのこと?」
「大丈夫……大丈夫だから、そんな顔しないで?」
「大丈夫じゃないよ!弥澪がそんな顔するのは、いつも悩んでいる時だってオレ知ってるから!」
「うん……でも、陸には関係のないことだから」
つい、そう言ってしまった。
自分の言葉に気づいたときには遅かった。
陸の表情が崩れ、今にも泣きだしそうになっていた。
「いつもオレが助けてもらっているから、今度はオレが助けてあげる番なのに」
「違うの。私は陸に迷惑をかけたくないだけで……」
「何が違うっていうんだよ!オレ、心配してるんだよ?迷惑かけてるじゃん!」
「陸、あまり怒らないで……発作が起きちゃうよ」
「オレの体のことなんて今はどうでもいいだろ!」
「っ!どうでもよくない!!」
怒っては駄目、怒らせては駄目、怖がらせては駄目、心配をかけさせては駄目。
駄目だと分かっているのに。