第2章 ★愛すべきもの〔大和〕
「そんなことって、あんた、自分がなに言ってんのか分かってんのか?」
「それはこっちの台詞!」
「阿呆、俺の台詞だわ」
デコピンをされて額を抑えると、大和はその隙を見逃さなかった。
素早くベッドから降り、落ちていた服を拾い上げて私から盛大に距離を取る。
「それ、そのままでいいの?」
「自分でなんとかするっつーの」
「……」
このまま引くか、それとも最後までやり遂げるか。
正直大和にやり返してやりたいという願望みたいなものはある。
「……」
「なんだよ……」
「……私がやる」
結局私のプライドが勝った。
じりじりと距離を詰めると大和もそれに対して徐々に後退していく。
彼の後ろには扉がある。
けれどそこから逃げることは出来ない。裸な上にあんな状況ではどう考えても出られるわけがない。
「全裸で追っかけっことか、何してんだ、俺……」
「大和が逃げなきゃいい話だから」
「無茶言うなっつーの」
私に任せてくれればいいのに。
そんな風に思ってしまい、なんとも歯がゆいような妙な違和感が溢れる。
(なんか私、すっごい変態みたい……)
改めてそう考えて見るととても恥ずかしくなる。
けれどここで引いてしまっては後々後悔するのは自分だ。
「むぅ……」
そばにあった枕をひっ掴み、勢いよく大和に向かって投げつける。
それをはじきかえす隙をついて彼を捕まえようとしたのだが。
「きゃっ!」
逆に大和の手によって捕らえられてしまった。
腕を押さえつけられて床に押し倒される。
「もういい加減にしろって!余裕ねーんだから!」
「……はい……?」
大和の顔は歪んでいた。ひどく辛そうな表情。
なにが一体彼をどうしたというのだろうか。
理由がまったく分からず、呆気にとられてしまう。
「あんたは誰にもやらない」
「……うん?」
「俺以外の奴に身体を触らせんな」
「……が、頑張る」
「ずっと俺の傍にいろ」
「っ!もちろんっ!」