第2章 ★愛すべきもの〔大和〕
「なんで温泉?」
「だって部屋に風呂があればそこで襲えるから」
「はぁっ!?」
「……冗談だっての。んなことバラエティに出せるかよ」
「大和なら本気で書きかねないから不安になるよ!」
「信頼感ねーなぁ」
信頼も何もこんなに遊ばれていては何が事実で何が嘘なのかさっぱりだ。
疑えるとこはとことん疑ってやる。
「ちなみに次の仕事なんか入ってんの?」
「ううん、今はとりあえずドラマの撮影だけ。そのうちいろんなところから勧誘がくると思うけど」
「ふーん……」
私が買ってきたお酒を開けながら、大和は大して興味なさそうに反応した。
その様子から、彼はまともに仕事を受ける気がないように思える。
実際最近はいくつかのオファーを断っている。
理由は単純。面倒だから。
他の仕事が忙しいからという理由でならまだしも、そんな理由で断るのはアイドルとしてどうかとも思う。
相手側にはなんとか謝って断りを入れているが、この仕事が中々に苦労するのだ。
「そういえば今日のドラマ、少しだけ表側の警官姿の撮影していたね」
「少し足んねー部分があったらしい。やった時に気づいてもらいたいよな」
「まぁまぁ。でも今日の大和かっこよかったよ」
「どこが?」
「なんか全体的に。普通の警官の時も良いし、裏に回った役も結構好み。というか、ドラマの中の大和はいつだってかっこいいよ」
「……ドラマの、ね……」
「もちろん普段もだよ?どっちも大好きな大和にかわりはないから」
「それ、嘘じゃねーんだな?」
「当たり前だよ!」
「んじゃ、文句言うなよ?」
「……へっ?」
突然腕を引かれたかと思うと、その手首に手錠がかけられた。左右にそれぞれ一つずつ。
「大和、これ……」
「今日使った手錠。作りもんだから本物と比べたら脆いけど、鍵がないと外れないやつ。結構リアルだろ?」
大和が荷物の中から撮影で使った手錠を取り出しながらそう言った。