第2章 ★愛すべきもの〔大和〕
「俺もそーちゃんの精一杯知ってる。怒らせた時危ないもん持ってくるやつ」
「「「いや、なにか違うから」」」
私と大和と三月さんのツッコミが重なった。
環くんは多分、壮五くんが何かを伝えたい時の必死さのことを言っているんだと思う。
まぁそれもそれで精一杯なんだろうけど、規模がまったく違う。
あれはもう洒落では収まりきらないほどのものだ。
「オレも一織の精一杯知ってるよ」
「リクは言わんで良い。イチが可哀想だ」
「……何でですか?」
「分かんないなら余計に黙っといてやって。一織が可哀想だから」
「だから何でですか?」
(陸くん、相変わらず鈍い……)
不思議そうな顔をして尋ねる陸くんがとても不憫に思えるこの状況。
一織くんが可愛いもの好きなのを、おそらく(というか確実に)陸くん以外の全員が知っている。
「とりあえずこの話は終わりで。環くんがプリン食べたくてうずうずしてますから」
「おー」
「ねぇ、何でなんですか?」
「だから終わりですって」
「教えてくださいよ〜」
陸くんに服を引っ張られた時、反対側から大和が私の腕を引いた。見ると彼は顎で自分の部屋を示す。
(すぐに部屋に来いってことかな?)
「大和さん、新しいお仕事の打ち合わせがあるんですけど」
「りょーかい。先部屋行っといて」
いつものやり方で部屋へと向かう。
多分一織くんや三月さん、壮五くんあたりは何となく意味を察しているのだと思う。
けれどそれを直接は言ってこないので、見て見ぬ振りをしてくれているんだろう。
「疲れるなぁ……」
「何が?」
後から部屋に入ってきた大和がそう首を傾げた。
「関係を隠すのが。何人かは気づいてるんだと思うけどね」
「バレたらそれでもいいんじゃねーの?」
「よくないでしょ。マスコミ殺到するよ?面倒ごとになるよ?」
「めんどいのは勘弁。でもあんたとの仲を隠さなくていいのは楽だな」
にっかりと笑って、大和はそう答えた。
普通に仕事をしていたらこんな笑顔を独り占め出来ない。
今ここにいるからこそ、彼は私だけに色々な部分を見せてくれる。
「そーいや前に番組のアンケートで、『彼女が出来たら初デートの場所はどこ?』ってのがあって、確か『温泉旅行』って書いたな」