第2章 ★愛すべきもの〔大和〕
肩にもたれかかってくる大和を引き剥がそうとすると、壮五くんがくすくすと笑った。
「二人とも仲が良いですね」
「え……」
「MEZZO"ほどじゃ、ありませんよ」
(なんでさっきからそんなことを言うのかな!?)
余計なことをさらりと口にする大和。
良い加減面白半分で揶揄うのやめてください。こっちが迷惑です。
そう言いたいけど言ったところでどうせ流される。流されるのを分かっているから言わない。
いっても無駄。
聞く耳皆無。
それが私の知る大和だ。
「んじゃ、帰りますか」
心の中を見透かしたかのように突然私から離れ、壮五くんとナギくんの肩を組んで歩き始める大和。
呆れ果ててその後を追いかけるようにしてついていくと、ふと壮五くんが思い出したように振り返った。
「弥澪さん、途中で環くんの学校に寄っても良いですか?」
「構いませんけど……どうしたんですか?」
「今朝環くんに、『帰りに限定王様プリン買いに行くから一緒に来て』って言われていたんです。時間もそろそろですし」
「それなら環くんも一緒に乗せていきましょうか?」
親切心でそう言ったのだけれど、壮五くんは首を横に振った。
「いえ、歩いていくので大丈夫です」
「そうですか?」
「やっぱMEZZO"は仲がよろしいことで」
「大和さん!」
完全に遊んでいる大和に一喝すると、彼は半ば逃げるようにして車に乗り込んだ。
「ヤマト、弥澪によく怒られマスね」
「変なところで馬鹿なんですよ、あの人は。子供の頃と全然変わってません」
「さすが幼馴染ですね。大和さんのことをよく分かってます」
「苦労が多いだけですよ。今も昔も」
本当に大和には苦労させられる。
けれどそういうところも好きだから、私は彼のそばで働き続けたいと強く願えるのだ。
車に乗り込んだ後、環くんの学校の前で壮五くんを降ろし、寮までナギくんと大和を送り届けると、私は事務所に戻るべく再び車を動かした。
(MEZZO"の仲良しな噂がどんどん尾ひれをつけて広がっているんだよなぁ……。まぁ、あんな楽しそうな様子を見たら誰だってそう思うんだろうけど……)