第2章 ★愛すべきもの〔大和〕
「あ……痛い……ッ、これ外して……」
右手に襲う痛み。じわじわと来るその痛みに思わず涙が溢れる。
そんな私の体は今、ベッドに四肢を固定されていた。唯一動かせるのは頭と腰だけ。
「お願い大和……外して……」
「ダーメ。お兄さんの気が済むまでこのまんま」
身動きの取れない私の右手に噛み付く大和。
(なんでこんなことになっちゃったの……?)
痛みに耐えながら理由を探し出す。
事の発端は約半日前のことだった。
「お疲れ様です。今回も中々にエグかったですよ」
「それ褒めてんの?それとも貶してんの?」
「両方です」
『アイナナ警察』の撮影で、私と大和、壮五くん、ナギくんはスタジオにやって来ていた。
今回は三人の密会シーンの撮影。
三人とも見事に悪役を演じてみせたが、その中でも大和の演技は誰をも唸らせるものだった。
「しっかしなんつーか、ソウも似合ってるよな。その役柄」
「えっ、それは勘弁してください。この前環くんに『サディストなそーちゃん苦手』って言われたんですから」
「oh……ドクターソウゴ、恐ろしいでス」
「ま、そんなことを言っときながら、仲いいんだよな。MEZZO"は」
「僕たちはそんなんじゃ……そうですよね、弥澪さん」
困り顔の壮五くんは縋るような目を向けてくる。
(そんなこと言われても……)
なんとフォローしてよいか分からずに、私は大和へと視線を向けてしまう。すると彼はすでにそっぽを向いていた。
面倒臭いと、その顔が物語っていた。
「と、とにかく帰りませんか?話はそれからでも出来ますから」
「おー、さんせー。お兄さんくたびれちゃったー」
「大和さん、どさくさに紛れて寄っかからないでください。重いです」
「いーのいーの。あんたは俺の枕なんだから」
「誰が枕ですか」