• テキストサイズ

アイナナ~当たり前すぎる日常〜

第1章 ★とりっくおあとりーと〔一織〕



そっと顔を伺えば、彼は少し汗ばんでいた。
その表情で彼も気持ちがいいのだと分かると、つい嬉しくなってしまう。



「あっ……あんまり、締め付けないで、ください」

「そんなの……知ら、ない……」



無意識のうちに強く締め付けていたらしい。
耐えるように一織くんがぐっと力をこめた。



「弥澪さ……」



もう理性なんて残っていなかったらしい。
いつもと違う一織くんが目の前にいた。



「弥澪……弥澪……」



必死に私の名を呼ぶ一織くん。



「一織く……あぁあッ!!」



またしても体が震え、頭の中が一瞬真っ白になった。
そんな状況で唯一分かったのは、私の中にある一織くんのそれがドクドクと波打っていたことだけ。



「一織くん……」



回復してきた意識の中で彼の名前を呼ぶ。
すると彼は少し不満げな表情で言った。



「呼び捨てで呼んでください」

「え……?」

「私はあなたを"弥澪"と呼びました。だからあなたも私のことを"一織"と呼んでください」

「……一織?」

「なぜ疑問系なんですか」

「……一織っ……」



愛するその名を呼ぶ。更に繰り返し呼ぶと一織く……一織が優しい笑みを浮かべた。



「はい、一織です」

「一織……一織っ……!」

「何ですか?」

「キス、して……」



すがりつくように名前を呼び、キスを求める。
もう何を言っても恥ずかしいという気にはならなかった。

もちろん恥ずかしいことは恥ずかしいけど。
でもこんなことをした後だから、これ以上に恥ずかしいことなんてこれっぽっちもない。



「やっと素直になりましたね」

/ 101ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp