第1章 Hello,world!
先ず最初に感じ取ったのは甘い匂い。続いて
窓辺に掛けて本を読む、美し、い………女性?
目を擦る。女性にしては顔と体の寸法がおかしい。
あまりにも体がでかすぎる。
鬼の体に美しい女の顔をすげ替えたようにしか見えない。
「アラ、やっと気づいたの?」
「ば、ば、化け物っ!」
「何よ!いきなり失礼な子ね!」
華美な装丁をした本が飛んで、それを頭で受け止める。
低い声よりも、流暢な日の本言葉が返ってきた事に呆気に取られる。
港の南蛮人だってこんなしっかり喋れる奴はいなかったから。
そこで唐突に思い出す。そういえば地獄の様な空腹が治まっている。
「名前は?」
「……、と言います」
「ふーん、聞いたこと無い名だね。で、アンタは何やってここへ飛ばされたの?」
「何って…飛ばされたって、どういう事ですか?」
「漂流者(ドリフ)ならアンタも何かしらやってここに来たんでしょ?大きな戦とか、国作ったり潰したりとか…有名な武勲の一つや二つあるんじゃないの」
「……全く意味がわかりません。どりふ、ですか…?」
聞き馴染みの無い単語と突然始まった規模の大きな話で頭の中は更に混乱する。
その人はゆっくり近付いてきて、私が寝ている高床式の布団に腰掛けた。
近付くとやっぱり綺麗な顔をしていて、まじまじと見てたら罰が当たりそうな気すらする。
命の危機でもないのに、心の臓がばくばくしていた。