第1章 Hello,world!
気付くと私は、焼け付く様な乾いた大地に伏していた。
「〜〜〜〜〜」
「〜〜〜〜〜〜」
私を取り囲む何人かの兵士達は一様に見慣れない南蛮風の造りをした鎧を身に着け、聞き取れない言葉を喋っていた。
まるで異国の地にでも来てしまったみたいで目眩がする。
飢えと言うものは惨めだ。言葉もわからない異国の兵士に捕まり、轢き擦られ連れて行かれるというのに、逃げ出す事は勿論、声を上げる事すら叶わない。
気が触れそうな飢えが、引き擦られている足の痛みが…
私がまだ生きているという事実を示していた。
涙を零すことさえできず、早く殺してくれと、思った。
積み荷の如く馬に括りつけられ、兵士は馬を走らせた。
良く肥えたいい馬だった。きっとこの国は豊かなのだろう。風が冷たく、そして揺れが不快で胃液を吐いた。それからまた意識が遠のいて、気付くと大きな屋敷の前にいた。
上体を支えることすらできず、紐を解かれた私は馬から落ち地面に身体を打ち付けた。
これまた南蛮風の華美な衣を羽織った、屋敷の女主が近づいてくる。
斜陽に透けて揺れる金の髪。
収穫前の黄金色に膨らんだ稲穂のように眩しく、磨かれた黄銅よりも清らかな金色。
美しい人だと思った。
きっとマリヤ様が私をお迎えに来て下さったのだ。
違いない。
祈りが通じたのだ。