第6章 コネクト
朝起きるとそこはいつもと変わらない景色だった。久し振りに顔を出したお天道様が見慣れた自分の部屋をぼんやりと照らす。くたびれた枕も、お腹の空き具合も、拍子抜けするくらいいつも通りだった。
寝間着を着替えようとした時、ふと"べっど"脇に伯爵がいつも使う茶器が置いてある事に気が付いた。
"てぃかっぷ"に黄金色の水面がきらきらと光っている。
すっかり冷たくなった茶を口に含むと、僅かに甘い香りがした。
『これ飲んだら寝なさいよ』
屋敷に来たばかりの頃、なかなか寝付けない私に伯爵が淹れてくれたのを覚えている。
「伯爵……ここにいたのですか?」
呟いた所で、誰も答えてはくれない。
「…伯爵、さんじぇるみ伯爵…」
名前を呼ぶだけで締め付けられるように胸が、痛い。
断片的に思い出せるのは、与えられる快感と温かい手、そして容赦の無い拒絶。
全て夢なら、どんなに良いか。
かみつれの茶をまた一口。
伯爵の優しさがどうしようもなく、冷たい。